2019年6月10日月曜日

ドーパミン系と大脳基底核

私たちの振る舞いが自然なのは、その時その場で状況にそくした最適な行動が選び出されているからですが、これがどんなにすごいことなのかと・・・

手がふるえたりすると自然な動きの妨げになります。こうした不随意的な動きと呼ばれるものから、
まったく無意味と言ってもいいような行為や、強迫観念という意に反して湧き上がる考えは、通常シャットダウンされるべきものなのですが、なにか神経システムに不調があると大なり小なり症状が出てきます。

私たちは長い年月をかけて自然な身体の動かし方を学習し、状況に応じた最適な身体の使い方を身につけてきました。小さいときから社会的に正しい振る舞ができるようにと躾けられ、家庭や、学校や、各コミュニティのなかで、人から褒められたり叱られたりしながら成長してきます。

こうした自然な振る舞いについて機能神経学にみますと、神経ネットワークの活動パターンとしてみることができます。膨大な数の神経細胞が互いに可塑的に結びつき神経ネットワークを構成し、数多くの運動パターンとして組み立てられているものと想像できます。

このような神経ネットワークがつくられ、状況に即して最も最適な振る舞いがなされるために、大脳基底核でのドーパミン系の役割が明らかになってきています。

大脳基底核は大脳の中心部にあって、線条体(尾状核と被殻)・淡蒼球(外節と内節の層構造)、それに視床下核などからなる複合構造体ですが、視床の活動を調整しながら大脳皮質(運動野)からの出力を制御する仕組みとなっています。状況にそくした運動が制御される機構になっています。

中脳の黒質(緻密部)から投射されるドーパミン系は線条体を介して、大脳基底核のさまざまな部位(核)の活動を調整します。(比喩的になりますが)それぞれの核の活動を、複数のダイヤルを回してチューニングするように調整し、視床の活動をコントロールするのです。

ドーパミンの投射と線条体の活動しだいで、無数の活動様式のなかから出力されるべき最適なパターンが選び出され、同時にそのほかのいっさいの活動はシャットダウンされるのです。運動を促進する経路と、抑制する経路が同時に視床の出力を調整します。

大脳基底核の階層的な複合構造体には、まさにスーパーコンピュータの階層的・分散的・並列的ネットワークと類似したシステムの機構が考えられているようです。

さまざまな状況で、自然な動きや行動として表れると同時に、こうしようという意思が浮かんでいますが、その背景にはドーパミン系の投射があります。

ドーパミンの分泌は、いかに褒められたか叱られたかという愛情の深さに育まれてきた過去の記憶との深い結びつきもあることがわかるのです。大脳基底核のほかに、ドーパミン系は前頭葉や大脳辺縁系にも投射されていますので、心と身体の結びつきはとても深遠なシステムであることが考えさせられます。

機能神経学を施術に活用してゆくために、根本的なところから理解することが大事なんだろうと。