2020年1月21日火曜日

マニュアルメディスン研究会誌111号 投稿記事から

マニュアルメディスン研究会誌111号 投稿記事からの結びです。

おわりに
 みなさんには、神田橋條治先生著 『技を育む、精神医学の知と技』を読まれることを勧めたい。神田橋條治先生は、気功から整体まで手技療法の感触をも身をもって感得し、実際に患者さんに手技療法を施しているようでもあり、神田橋先生の奥深い身体的な感性には驚きでもある。それ以上に驚嘆させられることは、ほんの数十分の雑談風の面談で、患者さんの奥深い意識下のレベルに共感し、本人の気づかないところに揺さぶりを入れる面談技法である。面談の場での小さな揺らぎはしだいにうねりとなって、その人の人生に大きな意味を与えてゆくのである。私もずいぶん前に初めてお会いしたとき、掛けてくださったなにげない言葉が私を励ますものであったことを今になって気づかされている。

 神田橋條治先生の一つの技法に、いわば脳を透視するように脳をみる特殊な技能を身につけられていることがある。脳の代謝疲労があるところを見てとれるというのである。医学書である本に、このようなことを書かれることじたいが驚きでもあるが、まさに驚くべき異能の医師である。
 神田橋先生の見ている世界の感触を言葉であらわすとしたら、メルロポンティの<肉>と表現されるところの「見えるものと見えないものの絡み合い」が連想される。身体を超えたひろがりの感触がイメージされる。身体呼吸療法でいえば、触れる手と触れられる側の可逆性である。触れるものと触れられるものはたがいに可逆的に触れ合っている、そのような関係の場のひろがりである。身体呼吸療法では、脳の呼吸活動ともいえる感触を介して、脳のはたらきに触れているような実感があり、被験者も意識下で感じ取っているものもあるはずであり、それが身体にあらわれる。身体呼吸療法で感じられる身体の息吹という深い律動生に触れることができると、しだいに横隔膜の呼吸運動が深くなってゆく。それに応じて、身体の緊張した硬直感が浮き上がってくるように感じられてくる。そうした硬直した部分には、ときには、ゴルジ腱器をバシッと刺激することでリリースすることもあり、あるいは内部から押し上がってくる内圧変動と施術者の圧との掛け合いによって歪みを解放することもある。神田橋先生がいわれるようにまさに生きるもの同士のアフォーダンスのようでもあり、思想的には本多直人先生が引用されている清水博先生の相互誘導合致ともいえる。


 今回、「機能神経学再考:精神・脳・身体」と題してまとめてみると、これまでMM誌でまとめてきた前庭系と脳の空間識に関わる内容が重複し、精神活動という人間の高次機能まで発展させたものになっていた。あらためて、視覚系と相並び、前庭/固有感覚系にはじまる脳機能が、機能神経学にとっても、心の問題を考える上にも大きな意味をもつことが認識させられたしだいである。

2019年9月25日水曜日

脳と自律神経 1&2

 めんけん(瞑眩)反応は、もともとは東洋医学で使われている用語で、治療の過程で一時的に起こる身体反応とされています。そして、それらは治療する側からすると好転反応として、症状が改善して行く際の反応としてみなされているようです。

 しかし、かならずしも医学的あるいは神経学的にきちんと説明がなされているわけでもなく、治療家だけでなく患者さんにとって、はたして好転反応として片付けて良いのか、不安は払拭できないところです。

 私自身、引き籠もりの状態が続いているという青年の施術を引き受けたとき、翌朝、ひどく体調が悪くなったという家族の話があったり、また、手が冷たく湿って緊張状態にある青年を身体呼吸療法をほんの少しばかり施術した後に気分の悪さと息苦しさが現れ、翌日、自分が自分でないような他人事のような感覚になり、フワフワ浮いているような状態になって一日続いたということもありました。

 脳と自律神経の関係になにか問題があるのではないかと考え、psychiatry, autonomic dysfunctionと入力し、ネットでいろいろと論文をみてみました。


1) 最初に、Frontiers Journalsのはしがきありましたので、それを要約してみました。

 「精神的・神経的なコンディションは基本的に中枢神経系と感覚運動のシグナルとにリンクしている。しかも、自己を表現するところの、認知や情動それに動機といったプロセスには、身体内部の生理学的な状態に基づいており、自律神経系のはたらきによって制御されている。
 末梢神経である自律神経系と中枢神経系が、さまざまな脳の神経学的な障害や精神医学的な疾患において、どのような相互作用をもち、症状を呈するであろうか。

 たとえば、テンカンの突然死 (SUDEP)において、発作時に呼吸困難あるいは不整脈が起こり死にいたるケースが1000人に1.16人の割合で起きていが、これには自律神経の異常な放電dischargeが示唆されいるにも関わらず、自律神経系と精神医学的な疾患との強い結びつきについては、あまり認識されていない。

 自律神経機能の変調は、心臓脈管系へのリスク、睡眠障害、精神的疲労(いわゆるfoggy brainのようなものまで)、解離性障害(普段の意識から切り離された精神状態)にまでおよぶ。

 自律神経機能の変調は、不安症や鬱病、統合失調症など、さまざまな精神医学的な疾患の初期サインとして、たびたび報告されてきている。

 側頭葉と前頭葉の皮質が刺激されたとき、動脈圧、心拍とそのリズムに影響する自律神経の混乱が生じることが報告されている。また、脳画像研究から、認知、情動、行動の際におこる自律神経の反応が観察されている。

 末梢の自律神経活動に操作を加えたとき、脳の感覚運動の神経活動と精神活動に関わるシステムにどのようなインパクトがあり、感情的な混乱をともなう自律神経の興奮がどのように神経学的な症状(テンカンの発作、トゥレット症候のチック)とパニックや不安の引き金となるのか研究が進められている。」


 確かに、脳と自律神経系は強力にリンクしていることがわかります。それでは、その仕組みはどのようになっているのか・・


2) 偶然にヒットした論文Potential interactions between the autonomic nervous system and higher level functions in neurological and neuropsychiatric conditions(Bassi A, 2015)が、私が冒頭に上げた疑問に答えているようであります。

 健常者でも自律神経の障害が一時的に現れることがあります。しかしそれが頻繁に起こる症状であるとき、神経学的あるいはそれ以外の疾患を疑われます。したがって、自律神経の障害はさまざまな疾患に共通してみられる病理生理学的な基盤とみなすことができるであろうとあります。そして、この論文では、起立性低血圧(OH)が自律神経系(ANS)の異常調節として最たるものと述べています。すなわち、認知機能など中枢神経系(CNS)が絡むANSの調節障害の典型的なものとして、立つなど、姿勢を変えたときの血圧の調節異常があるというのです。ANSの状態と、脳機能には逆比例する関係がありそうだと上記の論文は示唆していますので、脳になにかしら機能的な変調があると、OHが現れやすくなるといえるでしょう。

 逆にいえば、脳の健全性が高ければ、ANSの変動が抑えられているともいえるでしょう。OHが著しいものであったり、頻繁に起こることであれば、脳の変調を疑うことができます。仰臥位で安静時のときの血圧と立位をとった際の血圧を測り、過度の血圧低下が起こるかどうかみておく必要があるでしょう。OHは、20mmHgを上回る収縮期血圧の低下、10mmHgを上回る拡張期血圧の低下、またはその両方とされています。通常は、交感神経の働きにより反射的に末梢の動静脈が収縮し、心拍数も増加することによって、血圧が過度に低下するのを抑えています。(いくぶん収縮期圧が上がるのも正常な反応かもしれません。)


 外傷性脳損傷(TBI)が心臓脈管系に異常を起こすという報告もあります(Hilz MJ, J Neurol.2017)。TBIの6ヶ月後、TBIの傷害の重度に応じて、安静時と起立時に特徴的な自律神経の調節異常が起きているという、心拍変動から解析した自律神経活動の揺らぎ成分の観察です。

 健常者と軽度のTBI患者群と比較したとき、軽度TBIの患者群では、仰臥位での血圧収縮期圧と交感神経活動の揺らぎLH成分が高く、副交感神経活動の揺らぎHF成分が低くなっているとあります。軽度のTBI患者群では健常者に比べて、交感神経活動の揺らぎ成分が高くなっていることから、交感神経の活動性が亢進ぎみであることが考えられるでしょう。
 起立に際し、健常者と軽度TBI患者群とも、血圧収縮期圧と交感神経活動の揺らぎ成分が高くなり、副交感神経活動の揺らぎ成分が低くなっているとあります(これは正常な反応といえるでしょう)。

 これに関する研究のいっかんとして、眼球を軽く圧迫することで生じる自律神経活動の揺らぎ成分の観察があり興味深いものがあります(Hilz MJ, Clin Neurophysiol. 2018)。軽度以上のより重度のTBIの患者群ではすでに横になっている状態で、交感神経の活動を示す揺らぎ成分が、健常者群より低下しているとあります。血圧調整が安静時にあっても異常をきたしているというのです。
 健常者群で横になっているとき眼球を圧迫すると、著しく副交感神経活動の揺らぎ成分が高まり、交感神経活動の揺らぎ成分が減少します。(眼球心臓反射・アシュネル反射が起きるからだと思います。眼球付近を走る第V脳神経の三叉神経に刺激が加わったことで、第X脳神経の迷走神経に影響が出て心臓にも影響を与える反射です。)
 ところがより重度のTBIの患者群では眼球圧迫時には、こうした揺らぎ成分の変化はなく、かろうじて血圧の収縮期圧のわずかな上昇がみられるとあります。(本来は眼球圧迫によって血圧収縮期圧が減少して良いものが、逆に交感神経の活動がわずかに高めのままと理解できます。血圧調整の異常を示していることになります。)


 ここで結論としていえば、脳になにかしらの障害/傷害があると、起立性低血圧という臨床的な所見と、心臓脈管系の病理生理学的なところでの自律神経活動に異常が生じているということになります。

 さて、中枢神経ではどのような機能的障害が生じているのでしょうか? 引き続き、調査してみたいと考えています。また、なにかしらご指導いただけたら幸いです。
obahiroshi.dacnb@gmail.com

2019年9月12日木曜日

神田橋條治先生の著書 『不確かさの中を』

 神田橋條治先生の本は一行一行凝縮された文章で、なかなか心を据えて読まないと読み続けられないのですが、東京から鹿児島まで神田橋先生の診察を受けている患者さんが読まれていた『不確かさの中を』を目にして、これなら電車でも読めると思いkindle版で購入してみました。臨床心理士の滝口俊子先生との対談です。そのなかでこんなちょっと耳の痛いことが語られています。関心があればみなさんにも読んでいただきたく、引用させていただきました。

「・・・いろいろなものが織り成している一つの組織体のある部分だけに治療者が強く関心を向けるというのは、アマチュアなの。アマチュアには責任がない。興味や関心でやってもいいけれど、やっぱり治療者というのは、その組織全体を見るようにしなければ。・・・
全体を見ないで部分をいじるから。その部分については正しくても、変化をホールドしていく常識部分とか環境とか、そういう大きなところを放っぽり出してやると、めちゃくちゃになってしまうだよね。・・・無意識に興味を持っていろいろいじったり、それに関心を向けたりすると、必ず事柄がわき立ってくる。それをもう一度整えていくのは、セラピストではなくてクライエントの自我がやるんだ、と言うのではね(無責任でしょ)。もちろんそれは、やれるかどうか見極めさえあればいいわけだけど、見極めがなければ、もう何が何だか収集がつかなくなってしまうことがある。僕は、自分が若い頃、ずっとそうやってきたから、よくわかるよ。」(222-225p)

 本の前半では、神田橋先生が精神科医として診察を始めたころ、患者さんがみんな状態が悪くなっていったことを書かれていて、指導教官にたいへん迷惑をかけていたことを話されているんです。赤裸々に自分がアマチュアでったあったこと認めているようなもので、偉ぶって言っているわけでもなく、若い先生達の励ましにもなっているような気がします。

 病気そのものだけに焦点を合わすことなく、その人なりと背景にあるものを包むように、過去から今、そして未来へと生きて行くための勇気を与える、患者と家族とで雑談を交わしながらの診察風景が想像されてきます。

 ひるがえって私たちの徒手療法を省みたとき、部分と身体全体の調和をそのときどきの施術のなかでめざしているところでもありますが、時間的なところもあり、どうしても部分な問題解決(痛みの解消)にこだわってしまいます。

 部分と全体は長年試行錯誤しながらの課題でもあり続けています。これは神田橋先生やカウンセラーにとっても、診察時間をいかに効果的に短くできるかという課題でもあったらしく、行き着いたところは、全てがフラクタクルであり部分が全体を、全体が部分を包含しているという考え方になったようです。ぜひ、読んでいただきたいところですが、神田橋先生の真骨頂とも言うべきところを短く引用させていただきます。

 「患者の置かれている状況や背負っている歴史から患者の精神状態を説明するやり方はあまりにも辻褄が合うので、これは作りものと直感した。・・・現症を観察するだけで、そこに影さしている状況や歴史を読み取れる筈であり、それができない。・・・

 僕はその後、僅か数十分の心理療法が患者の生活全体や人生全体に影響を及ぼすのも、面接時間という小部分の中に全体が含まれており、我々は部分に含まれている全体に働きかけていることがあるだろうと考えるようになった。患者の生活全体や人生全体に思いを馳せながら患者に接しているときには、我々の底に流れている真なるものと響き合うのだろうと思うようになった。さらに、面接の一瞬という部分に面接時間全体が含まれることも可能であろうと考えるようになった。・・」(70p)

 私たちの徒手療法でもこうしたことが可能でしょうか。機能神経学的では1例として、脳の全体的な神経活動を眼球運動のように部分的なところから脳を活性化させることが試みられています。リハビリテーションの世界では、身体の運動によって脳の活動が変わってゆくことが確かめられていますので、機能神経学的にも中枢神経系にインパクトな刺激となる方法がこれからも見いだされてゆくでしょう。私個人的には、嚥下の仕方で脳の活性化される部位が異なることがfMRIで示されていますので、嚥下運動も有力な刺激方法になると確かめています。

 私自身の身体呼吸療法でも、患者さんに触れる瞬間、底に流れている真なるものと響き合う施術のあり方を求めてゆかねばと考えさせられたしだいです。本当に神田橋條治先生はすごい先生なんだなあと感じさせられました。
 電車の中で気楽に読める本として、次に、作業療法士の岩永竜一郎先生との対談「発達障害は治りますか?;治らないという考え方は治りませんか?」を手にしましています。楽しみです。

2019年9月6日金曜日

ドーパミン系と大脳基底核

 大脳基底核はいくつもの核から構成されていますが、そのなかで入れ子nestingのような階層性があります。この複合された核のグループに入力系として大脳皮質とドーパミン系があり、視床に対して抑制性の出力となるネットワークがあるわけです。階層的な大脳基底核のなかには、情報が伝わるルートに3つの経路があります。ハイパー直接経路・直接経路・間接経路にそった情報処理の流れがあります。

 大脳基底核の役割を喩えたイメージがあります。それはスタートラインにアスリートが並び、“位置について”“ヨーイ・ドン”の合図ではじまる運動競技です。なにごとも目的に適う運動開始の準備と実行がありますが、そのためには先ず、状況に応じた適した行動に移るために、なにが必要な運動とすべきか大脳皮質のさまざまな領域から情報が送られてきます。それには非常に多くの運動パターンの可能性があるわけですが、ドーパミン系はもっとも適したパターンをチューニングしてくれます(ここが最新の見解です!)。そして入れ子のような階層性からさまざまな運動パターンが振り分けられ、最終的に淡蒼球内節に状況に適した活動パターンが収束されます。この過程で、実行に移される運動と、その遂行にとって不必要な運動を除外する振り分けが起きていることになります。直接経路は運動遂行に関わる経路となり、間接経路は不必要な運動を抑制する経路ということになるでしょう。それではハイパー直接路は?となると、これは“ヨーイ”の合図のようなもので、すべての動きを止めて、スタートに向けて内部イメージに集中しているようなものでしょう。ハイパー直接路は、大脳皮質から視床下核(これも大脳基底核のなかまに入ります)を介して出力部である淡蒼球内節に入り視床に対してより強力に抑制をかけます。

 ドーパミン系は報酬系とも言われ、“快”や報酬の大きい運動や行為を強化する運動学習につながります。ドーパミン系と運動機能との関係は、パーキンソン病にみることができます。ドーパミンは直接路を促進し、間接路を抑制しますので、中脳黒質からのドーパミン投射が少なくなると、運動を開始したくもいっこうに進まずまごついてしまいます。しかも、間接路が亢進するため、体が硬直し思うように動きません。なんとか動き出すことができても、とても目的に適った動きとは言えないのです。きちんとした運動パターンはなくなっていないのに、それを円滑に始めて遂行することが困難になっているのです。

 大脳基底核は単に運動制御に関わるわけでもありません。大脳辺縁系がドーパミン系と皮質-大脳基底核と深いつながりがありますので、心の動きと習慣的な行為のコントロールにも関わってきます。偏桃体からの出力先の一つに大脳基底核の尾状核・被殻(ひかく)があります。 1例として、強迫性障害があります。強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ確認をくりかえしてしまう。手の汚れを過剰に気にして手を洗わずにいられない。戸締まり、ガス栓、電気器具の消し忘れを何度も確認してしまうなど、さまざまな表れ方をします。

 こうした症状の背景には極端な不安があり、前頭前野からの抑制にも関わらず、過剰な観念や行為があらわれてしまいます。機能的脳画像研究により前頭葉や基底核領域に異常な活動が認められています。また、強迫性障害の症状は、視床下核という大脳基底核の一部を刺激することで改善されることがわかり、視床下核における神経の発火に関連していることも報告されています。視床下核は大脳基底核の出力部である淡蒼球内節を亢進させ、視床から皮質への入力を強力に抑制するはたらきがあります。淡蒼球内節は大脳基底核の最終的な出力パターンが収束してきますので、本来抑制されるべきなにかしらの習慣的な行動パターンが抑制されず漏れてしまうのかもしれません。

 こうした障害をいかに抑え、生活の質をより高めることができるのか、機能神経学においても大事なテーマになっています。

2019年7月18日木曜日

ワークショップ 『嚥下障害を防ごう! テーマで嚥下のしくみ』

嚥下運動は単なる反射的な運動ではなく、大脳半球を広く活性化することがfMRIで明らかになってきました。嚥下運動のトレーニングは、脳を活性化させ、活き活きとした日常生活はもちろんのこと、脳機能改善にたいへん有効な方法になります。高齢者の肺炎が嚥下障害に起因することが多く、その予防に努めるためにワークショップを企画しました。
嚥下障害に関心のある方はどなたでもご参加できます。

講師&テーマ
阿部 靖 日本リハビリテーション専門学校講師  『嚥下の基礎と、体幹との関連』
玉澤 明人 『嚥下トレーニングの方法、飲み込み力をきたえるために』
    嚥下トレーニング協会 理事
大場 弘.『嚥下の機能神経学的なアプローチ:脳機能活性効果をみる』
    機能神経学専門学位修得カイロプラクティックドクター

会場  日本リハビリテーション専門学校イセビル(JR高田馬場駅5分)
開場 9時半  終了予定16時半    参加費 13,000円(昼食付き)
お申し込みは obahiroshi.dacnb@gmail.com       Tel.03-3254-0097 (大場)

2019年6月10日月曜日

ドーパミン系と大脳基底核

私たちの振る舞いが自然なのは、その時その場で状況にそくした最適な行動が選び出されているからですが、これがどんなにすごいことなのかと・・・

手がふるえたりすると自然な動きの妨げになります。こうした不随意的な動きと呼ばれるものから、
まったく無意味と言ってもいいような行為や、強迫観念という意に反して湧き上がる考えは、通常シャットダウンされるべきものなのですが、なにか神経システムに不調があると大なり小なり症状が出てきます。

私たちは長い年月をかけて自然な身体の動かし方を学習し、状況に応じた最適な身体の使い方を身につけてきました。小さいときから社会的に正しい振る舞ができるようにと躾けられ、家庭や、学校や、各コミュニティのなかで、人から褒められたり叱られたりしながら成長してきます。

こうした自然な振る舞いについて機能神経学にみますと、神経ネットワークの活動パターンとしてみることができます。膨大な数の神経細胞が互いに可塑的に結びつき神経ネットワークを構成し、数多くの運動パターンとして組み立てられているものと想像できます。

このような神経ネットワークがつくられ、状況に即して最も最適な振る舞いがなされるために、大脳基底核でのドーパミン系の役割が明らかになってきています。

大脳基底核は大脳の中心部にあって、線条体(尾状核と被殻)・淡蒼球(外節と内節の層構造)、それに視床下核などからなる複合構造体ですが、視床の活動を調整しながら大脳皮質(運動野)からの出力を制御する仕組みとなっています。状況にそくした運動が制御される機構になっています。

中脳の黒質(緻密部)から投射されるドーパミン系は線条体を介して、大脳基底核のさまざまな部位(核)の活動を調整します。(比喩的になりますが)それぞれの核の活動を、複数のダイヤルを回してチューニングするように調整し、視床の活動をコントロールするのです。

ドーパミンの投射と線条体の活動しだいで、無数の活動様式のなかから出力されるべき最適なパターンが選び出され、同時にそのほかのいっさいの活動はシャットダウンされるのです。運動を促進する経路と、抑制する経路が同時に視床の出力を調整します。

大脳基底核の階層的な複合構造体には、まさにスーパーコンピュータの階層的・分散的・並列的ネットワークと類似したシステムの機構が考えられているようです。

さまざまな状況で、自然な動きや行動として表れると同時に、こうしようという意思が浮かんでいますが、その背景にはドーパミン系の投射があります。

ドーパミンの分泌は、いかに褒められたか叱られたかという愛情の深さに育まれてきた過去の記憶との深い結びつきもあることがわかるのです。大脳基底核のほかに、ドーパミン系は前頭葉や大脳辺縁系にも投射されていますので、心と身体の結びつきはとても深遠なシステムであることが考えさせられます。

機能神経学を施術に活用してゆくために、根本的なところから理解することが大事なんだろうと。

2018年10月15日月曜日

機能性医学エッセンス セミナー

機能性医学エッセンス 3日間セミナー案内


開催日 2019年 7月13日から15日
タイムスケジュール:13 日13:00~18:30、14 日9:30~18:30、15 日9:30~15:30

会場 日本リハビリテーション専門学校 高田馬場 イセビル 校舎
東京都豊島区高田3丁目18(本校舎とは別の建物です。学校のHPでご確認ください。)

講師 安藤晴一郞DC, DACNB(現在、ニュージャージー州にて活躍)

講義内容:機能性医学のエッセンス
 機能性医学入門  血液・生化学検査貧  血糖代謝異常  炎症  甲状腺機能
 マイクロバイオーム  リーキーガット  

『19世紀にはじまるコッホ、パスツールによる細菌学や、それに続くフレミングなどによる抗生物質の発見から今日にいたるまで、医療は「症状と病気の診断名に対する治療」が主流です。しかし、対処療法に限界が訪れていることは、医療従事者である我々だけでなく、苦しんでいる患者自身も強く感じています。根本的な治療を目指している、いわゆる代替医療と呼ばれる徒手療法家でさえ、患者の症状に固執している場合が少なくありません。患者自身も、苦しんでいる原因不明の症状に診断名がつくことにより、精神的な安心感を覚えてしまう始末です。「葉が枯れていたらまずは根っこを調べなさい」と言われるように、診断名を治療するのではなく、その病気が起きている原因・メカニズムを理解し、治療する必要があります。しかし、そのプロセスは非常に複雑で、一つの原因が10
の病気を引き起こしたり、一つの病気が10の原因からなることもあります。同じ病気でも原因は十人十色で、一つの病気に対する治療のプロトコールは存在しません。残念なことに、私たち治療家が日々行っている治療(医学的介入)は、患者の健康の10%しか貢献していません。残りの90%は、患者自身の社会的、行動的、環境的要因で決まります。機能性医学は、その90%に焦点を置き、病気の原因とそのメカニズムへの到達をナビゲートするGPS のようなものです。そのためには、生理学と生化学の基礎を学ぶ必要があります。今回のセミナーでは、最新のリサーチを交えながら、目まぐるしく進歩している機能性医学のエッセンスを学びたいと思います。』

セミナー主催者
マニュアルメディスン研究会 代表 大場 弘.
千代田区鍛冶町2-2-8 タカシマビル9階 大場徒手医学研究所
03 3254 0097

募集定員 30名 参加費35,000円 非会員45,000円
MM会員と前回の出席者を優先いたしますので、予定が立てられましたらすぐにメールにて参加申し込みをお願いいたします。後日、振り込み用紙を送付いたします。

お問い合わせのE mail:
mms-oba@mbc.ocn.ne.jp

2018年7月6日金曜日

ドーパミン系は心と脳の架け橋か?

ノーマン・ドイジ著「脳はいかに治癒をもたらすか」は、機能神経学の臨床を考えるにあたってたいへん有益な示唆を含んでいて、また読み返しました。このなかでパーキンソン病の症状を歩行によって克服した事例があります。そこで考えさせられたのはドーパミン系の生物学的な意味です。
ドーパミン系というと「報酬系」、「動機づけ」、「やる気ホルモン」といったキーワードが連想されます。
ドーパミン系は中脳の黒質から、前頭葉、大脳辺縁系、大脳基底核線条体へとひろく脳に投射しているシステムであり、その影響は広範囲に及び、実にさまざまな臨床症状の因になっています。たとえば、パーキンソン病は身体的な運動障害をいう症状があらわれる代表的な疾患ですが、そのうちには「認知的」あるいは「心的」な基盤があり、身体的であるとともに心的な障害であるとあります。これは、著名な脳神経科学者達の証言をもとにした記載です(150p)。
なにごとも、動作を起こそうとする心のなかの動機があってのことですが、なにげない習慣的な行動にでさえ、それに必要なエネルギーの割り当てがなされ、それに見合った価値をドーパミンという貨幣で付与されていると理解しました。心のやる気がドーパミンという報酬で行動を引き起こしていると考えても不思議ではないのです。
それでは、やる気を起こす心のはたらきはどこから湧いてくるのかと考えてみますと、その人のうちにあるだけでなく、周囲の人と環境とによって引き起こされていることがわかります。脳の中で生じる一つに統合されたはたらきを心と考えてみますと、ドーパミンを放出する中脳レベルにも作用する基盤となっていることがわかります。このように考えてみると、ドーパミン系は心と脳の架け橋のようなもの、そんな印象がわいてくるのです。
心的努力による歩行からパーキンソン病という身体の障害を克服できたという事例が語っていることは、心のはたらきが脳の神経組織を変えることができるという神経可塑的な可能性の一例でした。

2018年6月13日水曜日

不定愁訴と気圧の変化

からだがだるい、めまいするような・・、おなかのぐあいが・・、ボーッとするような・・、自分がはっきりしない、不安感がわいてくる・・、等々、さまざまな不定愁訴を訴えられる方が続きます。

このところの天候が影響していることが明らかです。
なぜ、天候がそうした症状を引き起こしているのでしょうか。

触れてみてわかる身体のどんよりとした感覚、抹消の循環機能に影響しているように思われます。実は、身体のバランス維持にかかわる前庭系と小脳が体位変換時の血圧調整に関わっていることがわかっていたのですが、それが実際に機能神経学的にどのような状況なのか、脳の正中線領域についての最近の研究に接して、納得のゆく推論を得ることができました。

いわば身体は自然に属しているわけで、環境の変化が身体にあらわれるのは当然と言えば当然なのですが。自分の心と身体を自覚できる意識のありよう、脳のはたらきがわかってきたことにも驚嘆させられます。
思えば、若かりし頃、意識ってなんだろうと不思議に思っていたことが、今ようやく理解できてきたような気がします。

実際に得られた推論をもとに施術を試みますと、とてもすっきりします。
長年、積み上げてきた知識や触診の技が統合されてきたような実感がわいてきます。






2018年5月22日火曜日

7月15-16日 機能神経学セミナーのご案内

機能神経学テキスト勉強会

2018年 7月15日(日) 13:30∼21:00
2018年 7月16日(祝月)9:30∼15:00

JR大井町駅前 「きゅりあん」(品川区立総合区民会館) 第3講習室

大場 弘.
講義内容
 前庭-小脳システムに関連した臨床
 大脳辺縁系と中脳に関連した臨床
   橋延髄網様体に関連して
実技研修
 グループに分けて先回の実技内容を復習
 実際のケースにおける機能神経学の戦略
 実技内容(復習を含む)
 吸気誘発肋骨アジャスト
 臨床のためのABC:外眼筋と眼球運動
 機能神経学からみた歩行と姿勢
 基本的な神経検査手順
 OPKとその臨床応用

お問い合わせとお申し込みは
hotline@manual-medicine-jp.org

2018年4月19日木曜日

鼻の通り具合が左右で周期的に変わるサイクルがあり、それが対側大脳半球の活動と関連しているらしい

前に古いブログで書いたことがあるのですが、『鼻の通り具合が左右で周期的に変わるサイクルがあり、それが対側大脳半球の活動と関連しているらしい』ことを思い出しました。その内容をレヴューしてみました。



左脳と右脳の活動が周期的に交代している



Int J Neurosci. 1993 Jun;70(3-4):285-98.

The ultradian rhythm of alternating cerebral hemispheric activity.

Shannahoff-Khalsa D.

Khalsa Foundation for Medical Science, Del Mar, California 92014-5708.

「大脳半球活動がultradian rhythm(生体リズムの周期が24時間未満)で交代している」という1993年の論文

大脳半球の活動リズムが、左脳と右脳の優位性が覚醒時に100分をピークに、90分から200分の範囲に集中して交替している。しかも驚くことに、その周期リズムは、鼻のサイクルと関係しているらしい。また、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが大脳の側性と同期しているとも述べている。



Nasal Cycle?

鼻孔が左右交互により大きく開きぐあいが変わるサイクルがあるということです。鼻孔の開きぐあいよりも空気の流入出の測定でみると、左利きの人はより強く左の鼻の呼吸に偏り、右利きの人は右の鼻に呼吸が偏る傾向がみられるとあります。(Nostril dominance: differences in nasal airflow and preferred handedness, Laterality. 2005 )



目が醒めている状態で、鼻のサイクルと同期して大脳半球の活動リズムが1.5~3時間周期で交替している。そうした自然のリズムにおいてそれぞれの大脳半球のはたらきが、言語的な空間的な能率にとてもよく関連している。片側の鼻孔をおさえて他方の鼻孔だけで呼吸を強いると、反対側の大脳半球の認知的な覚醒が高まるという。(The effects of unilateral forced nostril breathing on cognition, Int J Neurosci. 1991)。



自閉症のこどもたちでは、まさに大脳半球の顕著な側性が認められているということです。利き手、利き目が左側で、鼻のサイクルもまた左が優位であるとする報告があります(Handedness, eyedness and nasal cycle in children with autism., Int J Dev Neurosci. 2007)。自閉症のこどもたちは、右脳に偏ったはたらきがあるということになるのでしょうか。ただ、サンプル数も37例とそんなに多くはありません。それに、偏った脳の側性によって自閉症が起きていると言っているわけではありません。自閉症には、人との交流と関係を築いていく能力に遅れがあるために、こうして右脳に偏った働き方となるのでしょう。



私の患者さんのエピソードから

女性でありながら、大学で政治を教えている方ですが、頸椎症と肩・背部に放散する痛みを訴えています。お腹の呼吸が硬くなっているために、身体内部の圧力が萎んだようになって、頸胸部が縮んでいるからですと話しましたら、どうしてお腹の呼吸ができないのでしょうと訊ねてきました。“どうしても固定した対象に集中してしまうところがあるからでしょう。左脳に偏る傾向が強いからです。一つの対象に集中するのではなく、もっと空間全体に注意がおよぶような感覚がだいじです。料理や生け花のような趣味を習慣的にしたり、自然の中で川の水の音とか、小鳥の声とかに耳を傾けるように、自然の中で瞑想することもいいのでは”とアドバイスをしたのです。
そうしましたら、若年性痴呆症で有名な築山先生に診察を受けたときにも同じようなことを言われたというのです。左右の脳組織の線維が段違いに左脳で発達しているMRI画像を見せられて、“あなたは自分のことに集中しすぎるところがあります”と言われて、やはり私と同じアドバイスをしてくれたと話してくれたというのです。
身体の正中で、きちんとした呼吸の力動性が生じていないと、中から上下に背骨を伸ばしてくれる力動性がなくなるために、姿勢は崩れて老化がはやくなるのです。姿勢をきちんと保てることと、お腹の呼吸はきわめて大事ですよと念を押したのですが・・・

2018年3月6日火曜日

血液検査表は何を語る

33-4日、NJ州で開業されている安藤晴一郎先生をお招きし、血液検査の読み方について講習を受けることができました。
血液検査と言っても数値が高い/低いだけをみるのではなく、その意味を生理学的に考察し、底流にある全身的な問題を明らかにしようという機能性医学(ファンクショナル・メディスン)セミナーの一環です。

日本で日本語で学べるということは、たいへんありがたいことでした。

機能性医学(Functional Medicine)は、私が学んできた機能神経学(FN)の範囲をさらに内科的/生理学的にひろげたものです。原因の分からない不定愁訴を理解するうえでたいへん有益です。

もともと機能神経学(FN)では、脳が健全に機能するためには、酸素、栄養(グルコース)そして感覚・運動刺激が必要であると教えています。

生理学的には、酸素の取入れから始まり酸素を運ぶ赤血球の血流、それに糖代謝から免疫系と一連の流れを理解することは、予防医学としてもとても大事なことです。

細胞に酸素が十分に届けられないと、生体エネルギーの素であるATPが必要なだけつくられません。そうしますと、栄養をもとにした代謝過程がすみやかに進まなくなります。そうしますと、細胞にエネルギーも燃料も供給できないばかりでなく、不燃物などの蓄積が生じてきます。そうした不燃物や老廃物を燃やして、なくしていかなければなりませんので、炎症がいろいろなところで生じてきます。そうしたはたらきは免疫系の一連の出来事になってゆきます。

こうした底流にある一連の流れを理解することで、血液検査の数値にあらわれる各項目の関連性が浮き上がってくるのが認識できました。

最初にみなくてはならないのは、どんなかたちで貧血が起きているのかと言います。貧血は鉄不足だけとは限らないのです。鉄分の吸収、運送、貯蔵といったプロセスもありますが、ヘモグロビンや赤血球のできかたにも関わってくるのです。

造血には葉酸とかB12の関わり方も重要になってくるのです。DNA情報がmRNAに正しく転写されないと、造血に必要なたんぱく質が合成されない事情があるのです。

いろいろと難しいところがあるのですが、安藤先生は分かりやすく見事に描き切ってくれました。おかげさまで、患者さんの状態を理解する新しい手段を得ることができました。

安藤晴一郎先生に感謝です。

4月21/22日の機能神経学の勉強会でもこうした基礎となる流れを扱ってみたいと考えています。

2018年2月1日木曜日

聞こえない騒音

本来、耳では聴こえない音の低周波に悩まされいる人たちがいます。
通常、私たちは60デシベル以上の騒音にやかましいと感じ、それ以下ですとほとんど騒音としては感じることはないそうです。ところが、40デシベル以下の通常聞こえないはずの低周波音にひどく苦しんでいる人たちがいるというのです。

そのような患者さんの一人、Nさん(女性)が低周波音被害者であるとして来られました。
御年なんと90歳、歩行も動作もしっかりしているのですが、耳がとても遠いのです。耳元で話さないと聴こえないのです。耳の聴こえない人が騒音に悩んでいるというのも不思議な話ですが、得も言われず響いてくる音に、気がどうにかなりそうになるというのです。

とにかく、これを読んでくださいと持参された本がありました。そのときは寝違いで首が痛くて回らないということがありましたので、そのための施術をおこない、今度来られるときまで読んでおきますと約束し、汐見文隆医師の書かれた「左脳受容説:低周波音被害の謎を追う」を読まさせてもらいました。

汐見文隆医師は低周波音被害の方々に真摯に向き合い、その謎を追い求めた経緯と、行政への訴訟の過程が書かれています。

低周波音被害の謎、それは左脳受容にあると述べているのですが、角田忠信氏が書かれた「右脳と左脳‐その機能と文化の異質性‐」を根拠にしています。
角田忠信氏は“日本人は西洋人と異なり左脳で虫の音を聴く”ことを指摘されました。そこで汐見文隆医師は、本来は右脳で処理されるべき機械音や雑音が左脳にその低周波の振動が伝わるために低周波音被害が起こってしまうのではと考えるにいたったのです。

そこで私としては、Sさんのために何かができるか考えてみました。
右脳に低周波振動が伝わるように振動を誘導できれば、苦痛も和らぐのではと・・・
ウェバー聴力検査を応用すれば良いと閃きました。

左耳を塞いで鼓膜から伝わる振動をシャットアウトし、低周波の振動が左側から優位に骨伝導として右脳に伝わるようにしたら良いと思いついたのです。
Sさんに説明しましたら、90歳にあっても驚くほどすぐに理解してくれました。

次に来られたのは数か月後でした。
寝るときにゼル状の冷却用マットで左耳を塞いでいると、苦痛が和らぐことが実感できていると話してくれました。少しでも軽減できていることに安堵し、汐見文隆医師に感謝を込めて報告させていただくことにしました。


正中をテーマに

こんど仲間内で勉強会をしたいという提案があって、私には座長のようなことをやってもらえればということでした(日程は調整中で、5月から6月とのこと)。自分で勉強していることを人に伝えたいという思いもあり、発表者の一人として参加させてもらうことにして、提示されたテーマについて考え始めました。

武術でも正中線ということが重要視されますが、正中をまっすぐな硬直したラインと考えてしまうと、柔軟な動きをつくりだすことができなくなります。それじゃ正中線といわれるものは何かということになるのですが、私は呼吸軸として考えてみたいのですが、このことについては身体呼吸道のブログの方でみてみたいと思います。ここでは、身体の正中について機能神経学的に考えてみようかと思います。


視覚的な正中
正中というと視覚的なイメージとして最初に頭に浮かんできます。視覚的に真ん中をどのように認識しているのか先ず気になります。

視覚系のしくみを観ますと、左視野と右視野が重なって中央の視野になっていますが、これは網膜の中心窩から後頭極のV1(第一次視覚野)への投射となります。目の前の人物像がイメージとしてどのように写し出されるのか、実際はニューロンの活動なのでイメージというのは正しくはないのですが分かりやすく比喩的に言いますと、左右の半身が中央で分断され左右/上下に逆転したかたちに分かれます。注視された中央で左右が分断されて、右視野と左視野が、左右の大脳半球でそれぞれ分かれて処理されます。

人物の顔を注視しているとすると、顔の正中は上の図の垂直子午線と示される一次視覚野V1と二次視覚野V2との境の神経細胞に投射されるということらしいのです(岩村 吉晃氏)。
http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n2001dir/n2448dir/n2448_01.htm


視覚的には対象物の正中ということになりますが、自分の身体の正中となると事情は変わってきます。何をするにしても自分自身の身体と姿勢が、ほとんど意識されずに頭の中で把握されていることは自明です。自分自身の主観的な正中と、対象物の正中の認識のしかたが当然のことながら異なっています。自己の正中の認識には、視覚系とは別のルートからの感覚情報の統合が必要です。身体感覚としてのイメージには、体性感覚、固有感覚、それに前庭感覚の統合が必要になってくるのです。


正中は左右の統合から生まれる?
生まれて間もない幼児は、左右の手足の動きはバラバラで、左半身右半身が一つになっていない印象があります。左と右が一つに統合されてはじめて身体が目的にかなった動きができてくることになります。たとえば両手指で何か細かいものを扱う時には、両手が正中線のすぐ前にきますから、左右の大脳半球にある2つの独立した手指の領域は脳梁を介して連絡する必要があります。したがって、左右の四肢がたがいに協調して複合された運動には中心となるものが想定され、こうした複数の中心が身体正中に沿って配列することが考えられます。そうした複数の中心が成すラインが、正中線として想定できるのではないでしょうか。したがって正中線は立位の時の直線だけとは言えず、身体のさまざまな動きにおいて柔軟に曲線を描くこともあるわけです。

左右の半身が正中を結び目としてどのように脳内で一つに融合され認識されてゆくのかと考えてみると、とんでもなく不思議な脳の世界への入り込んでゆく気がします。

はたしてどのようなプロセスをたどるのか、また続きを考えてゆきます。

ご挨拶|マニュアルメディスンとは

米国の代替医療から発展してきたカイロプラクティックやオステオパシーにならい、手技で健康回復をはかる徒手療法をより医学的な基礎の裏付けされたかたちで発展させたいと願い、マニュアルメディスンという名称のもと30数年にわたって出版やセミナーなど啓蒙活動をおこなってきています。

もともと私はカイロプラクティックの大学を卒業していますので、カイロプラクティック神経学から発展してきた機能神経学を卒後教育の課題として毎年受講しています。日々進歩し続けているニューロサイエンスをもとに複雑な神経ネットワークのしくみを理解し、臨床に役立つ知恵を学んでいるところです。

こうして学んだm知恵を共有し徒手療法の臨床にヒントになることがあれば、私の患者さんだけでなく、ひろく多くの方々の役に立つものと考えています。
ここでは日々の気づきを書き綴ってゆきたいと思っています。

2018年1月11日木曜日

【著書紹介】「頭蓋療法から身体呼吸療法へ」

「頭蓋療法から身体呼吸療法へ」


大場 弘著
マニュアルメディスン研究会発行
¥8,000(税込み)

オステオパシの頭蓋療法から、日本人としてのハラ呼吸を基本に独自に発展させてきた身体呼吸療法、そのエッセンスをここに創始者としてまとめることができました。
呼吸や循環などのリズムのなかにある微妙なゆらぎ、そこには生命の営みとしての息吹があります。その生命の息吹に接触することで、身も心も変化してゆきます。
これまで続いて生きたパターンを転換させるために、身体内奥のゆらぎに接触しあらたなパターンを創発させることが治療のエッセンスとなっています。病気を見つけることから、健康を見つけることへの転換です。


【著書紹介】「マニュアルメディスンの基礎」

「マニュアルメディスンの基礎」


大場 弘著
マニュアルメディスン研究会発行
10,000(送料と税込み)50% off ¥5,000で提供致します。 

マニュアルメディスンについての基礎をわかりやすく写真解説付きで紹介しています。
カイロプラクティックとオステオパシの統合をめざす著者の意欲作。
第一部でカイロプラクティックとオステオパシの考え方が述べられ、第二部では、筋骨格系について運動力学的な観点からの統合された理論と、それぞれの典型的なテクニックが紹介されている。
第三部は身体呼吸療法に関する内容で、身体呼吸波の誘導法、頭蓋療法の基礎などが扱われている。


【著書紹介】「身体呼吸療法の奥義を語る」鼎談書簡集

「身体呼吸療法の奥義を語る」鼎談書簡集


編著:
大場 弘(マニュアルメディスン研究会代表・米国認定カイロプラクティック神経学専門ドクター)
本多 直人(仙台徒手医学療法室)
伊澤 勝典(イザワカイロプラクティック瑠楽院)
292 頁 / A4 判 6,300 円を割引価格¥3,500 (送料・税込)で提供致します。
マニュアルメディスン研究会発行

大場弘、本多直人、伊澤勝典が、身体呼吸のエッセンスをわかりやすく語り合い生命の本質に迫る。「身体呼吸は原思想である。相手の身体との間に活(はたらき)の異なるゾーンがあり、呼吸に関わるリズムが重要な役割をもつ。」
-場の研究所・清水博先生(東京大学名誉教授)-


【著書紹介】大場 弘のマニュアルメディスン実技講座

大場 弘のマニュアルメディスン実技講座

(2019年6月をもってDVDの取り扱いが終了しました。)

(制作 : ジャパンライム株式会社)

「歩行と姿勢バランス」全四巻セット
マニュアルメディスン・ネット価格 (送料・税込み)30,000円

「頭蓋と全身:軸骨格系を中心に」全三巻セット
マニュアルメディスン・ネット価格(送料・税込み)28,000円

「頭蓋療法」全三巻セット
マニュアルメディスン・ネット価格 (送料・税込み)30,000円





2018年1月10日水曜日

【テクニック解説】頭蓋仙骨療法とクラニオパシ(頭蓋調整)

脳髄液に伝わる生理的なリズムと呼吸リズムを利用した身体呼吸療法

生体内に息づくリズムを調整し、生理的な効果をもたらすことが本来の目的である。リズムが同調し合うと、呼吸運動を巻き込み大きな力動となるため、この内在力を使って、仙骨から脊柱そして頭蓋へと、中心となる筋骨格を生理的に整えてゆく方法。
力学的な作用だけでなく、生理的に筋トーヌスのバランスがはかられるため、きわめてリラックスした状態で緊張を解放できる。